高支持率追い風に改革・統合「スタートダッシュ」 文政権1カ月
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、8日で就任30日目を迎えた。憲政史上初の大統領弾劾に伴う早期の大統領選で当選し、政権引き継ぎの期間もなく新政権を船出させた文大統領だが、この1カ月で長期に及んだ国政の空白を一気に埋め、政権運営の基盤を固めつつある。
文大統領は、先月10日の就任と同時に李洛淵(イ・ナクヨン)氏を首相候補に指名するなどの人事を自ら発表し、国のリーダーとして国民と意思疎通する姿勢を印象付けた。また、任期初期に「改革」の方向性と枠組みをどう定めるかが政権の運命を左右するとの判断の下、就任初日からさまざまな課題を一つ一つ具体化する「速度戦」を展開した。
だが、文政権が国政運営の安定的な枠組みを築いたと評価するには時期尚早との指摘もある。人事の検証が足りず閣僚や青瓦台(大統領府)高官の人選が今なお難航している上、安定した国政運営に欠かせない野党との協力は依然大きな課題となっており、さらに外交面での難題も立ちはだかる。
文政権のこの1カ月を表わす二つのキーワードは「改革」と「統合」だった。改革により旧時代的な悪弊を確実に断ち切らなければ、全ての理念と世代、地域をひっくるめた真の統合は果たせないというのが文大統領の国政運営哲学だ。
特に優先されたのは改革だった。検察や軍、情報機関の国家情報院といった権力機関にメスを入れたほか、過去の李明博(イ・ミョンバク)政権が推進した4大河川整備事業の政策決定や実施の過程に対する政策監査を指示した。多数の死傷者を出した加湿器用殺菌剤問題では、大統領としての謝罪コメント発表を検討するとした。
文大統領は、大統領選で訴えてきた改革構想を行政権限である「業務指示」の形で具体化している。就任初日に出した最初の業務指示となる雇用委員会の設置を皮切りに、保守系の朴槿恵(パク・クネ)前政権が推進した国定歴史教科書の導入取りやめ、粒子状物質(PM10)低減に向けた古い石炭火力発電所の一時停止、2014年4月の旅客船セウォル号沈没事故で犠牲となった臨時教員の殉職認定などを次々に指示した。
業務指示は、単なる改革公約の具体化を超えるものだった。朴槿恵被告を巡る疑惑の捜査責任者だった検察幹部の金銭授受疑惑を巡る監察や4大河川事業に対する監査の指示などは、韓国社会の改革にとどまらず、文大統領が規定する悪弊を正すための第一歩と読み取れる。
誰が大統領になっても少数与党のため苦戦を強いられるという予測に反し、文大統領が改革にスタートダッシュをかけられたのは、多くの国民からの支持があったためだ。世論調査会社の韓国ギャラップが先月30日から今月1日にかけ全国の成人1004人を対象に調査した結果では、文大統領の職務遂行を「うまくやっている」と評価する人が84%に上った。
改革に向けた一連の措置は、文大統領が国政の究極目標として提示する「統合」を念頭に置いたものとみられる。
地域や理念の対立が残る中で、文大統領は出身地や経歴に関係なく能力のある人材を適材適所で活用するという原則を示し、大統領選を争った安哲秀(アン・チョルス)氏を支えた張夏成(チャン・ハソン)高麗大教授を青瓦台政策室長に起用するなどの人事を行った。
国を守るため犠牲になった人々を追悼する「顕忠日」の6日に行った演説では、愛国に保守と進歩(革新)の区別はないと強調し、韓国社会の各分野で脱理念的な国民統合を目指す姿勢を鮮明にした。
就任2カ月目に入る文大統領の急務は、閣僚と青瓦台高官の人事だ。青瓦台の首席秘書官クラスが相次いで内定撤回や辞任という事態となり、閣僚の人選が人事検証により難航している上、人事聴聞会では野党の攻勢にさらされている。野党を国政のパートナーと見なし、与野党と政府が参加する国政協議体を設置するという構想も掲げたが、実現はまだ遠そうだ。
また、最近になって再び大きな争点に浮上した米最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の配備問題など、外交や安全保障上の懸案に賢く対処していくことも課題となる。THAAD配備を巡っては国内でも異論があるが、米国はもちろん中国など周辺大国との利害関係が絡んでいることから、この問題で文政権の手腕が試されそうだ。
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