朴槿恵氏を罷免に追い込んだ「ろうそく集会」 初開催から1年
【ソウル聯合ニュース】親友による国政介入事件や数々の疑惑を招いた韓国前大統領、朴槿恵(パク・クネ)氏の退陣・弾劾を訴えた市民らによる「ろうそく集会」が、初開催から間もなく1年を迎える。
朴氏の親友、崔順実(チェ・スンシル)氏による国政介入疑惑が浮上した直後の昨年10月29日、ソウルの中心部で行われた初の週末のろうそく集会は、今振り返ってみると参加者3万人(主催側推計、以下同じ)ほどの比較的小規模なものだった。
集会には進歩(革新)系団体とは関係のない一般市民たちが大勢参加し、朴槿恵政権への怒りをあらわにしながら「退陣」を求めた。当時は予想できなかったものの、集会は最初から超大規模化する兆しを見せていた。
◇全国に広がり過去最大規模の集会に
3万人で始まった集会の参加者は急速に膨れ上がり、2週間後には100万人を記録。朴氏や崔氏に絡む事件の捜査のための特別検察官が発足する直前の5回目集会(11月26日)には150万人、国会が朴氏に対する弾劾訴追案を採決する直前に開かれた6回目集会(12月3日)には170万人が集まった。
主催側の「朴槿恵政権退陣非常国民行動」は、6回目集会の参加者数を地方で同時開催された集会の参加者と合わせ232万1000人と発表した。これに基づくと、憲政史上で最大規模の集会だ。
その後、大みそかの12月31日に開かれた10回目集会、特別検察官の捜査終了を前に今年2月25日に行われた17回目集会にも、それぞれ100万人が参加した。3月4日の19回目集会にも95万人が集まっている。憲法裁判所は3月10日、朴氏の罷免を認める決定を言い渡した。
主催側は昨年10月29日から20週にわたり毎週ろうそく集会を開き、朴氏の逮捕など関連の要求をするためさらに3回集会を行った。この23回の延べ参加人数は、ソウル中心部・光化門の集会だけで1423万5000人、地方の集会を含めると1685万2360人だったと推計している。
「ろうそくは風が吹けば消える」という当時の与党議員の発言をあざ笑うかのように、ろうそく集会はソウルにとどまらず全国に広がった。国民が集会を支持していたことは、支援金額にも表れている。朴槿恵政権退陣非常国民行動によると、同団体には口座への入金と集会会場での募金を合わせて39億8000万ウォン(約4億円)余りの支援金が集まったという。
◇暴力・事故のない平和集会が定着
ろうそく集会は参加者の多さに加え、暴力的行動や事故がなく総じて平和的に行われたことでも話題を集めた。大規模集会では群集心理が働き、暴力的行動に出たり警察などの公権力に盾突いたりすることも多いが、ろうそく集会では警察のバスに上ったりした人をほかの参加者が止める姿がみられた。また、わずか500メートル離れた場所で朴槿恵氏支持団体による集会が同時に開かれても、双方の衝突は起きなかった。
「ろうそく精神の継承」を表明した文在寅(ムン・ジェイン)政権が5月に発足して以降は、こうした非暴力集会に合わせて警察も原則的に車のバリケードや放水車を用いないことを決めた。平和的な集会が社会に根付いているといえる。
◇政界を動かした市民主導の「広場民主主義」
崔順実氏による大統領演説文の代筆疑惑などが徐々に大きな問題となったものの、最初のうちは朴槿恵氏が大統領を辞め、逮捕されるとはなかなか予想できなかった。
だが、ろうそく集会の参加者は最初から一貫して「これが国か」と叫び、朴氏の退陣、弾劾を明確に要求していた。弾劾訴追案の可決などに確信が持てず尻込みする野党を叱咤(しった)しながら弾劾を訴え続けたことで、実際の国会採決では与党だったセヌリ党(現在の自由韓国党)所属の議員までが世論に押され賛成に回ったと分析される。結果的に、集会に加わった市民たちが朴氏を大統領の座から引きずり下ろし、裁判を受けさせる上で先頭に立ったことになる。
これを受け、前倒しで実施された大統領選では旧与党を除く候補たちがろうそく精神の継承を掲げ、当選した文在寅大統領は自ら「ろうそく革命で誕生した大統領」だと述べた。就任後は国民の声を聞き取り国政に生かすため「国民引き継ぎ委員会」を設置した。ろうそく集会に代表される「広場民主主義」を現在の代議制民主主義の下でどのように国政に反映させるかを腐心しているようだ。
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